2008

07.12

« 神骨拳法 »

骨には、神秘の力がある。

ふう。

そんなもん、ねえ。


いや、唐突な切り出し方でしたな。失敬、失敬。
何の話かというとですね、強くなりたいぜ、俺は体を鍛えるぜ、と思っている人は割と、口を開けばマッスル、マッスル、やれ伸筋だ、深層筋だ、オナ禁だと、筋肉にばかり目を向けていますが、あんた達、誰のおかげで地べたに足つけて立ってられるんだい?! 全部、骨格様のおかげだろうが! というお話です。

といっても、骨って鍛えようがないじゃん、牛乳と小魚でも食べるしかないじゃん、と思うでしょう? だったら一生、牛乳と小魚でも食ってろよ! 実際、それしかねえよ!
ええ、骨は鍛えるという事はありません。しかし、もっと有効活用する事が出来るのです。

骨格、というものは、実に偉大な性能を持っています。物を持ち上げる、運ぶというような事に関しては、筋力を主体にするより、姿勢の安定に努めたほうが、楽に出来ます。
インドだか、アフリカだかの女性などが、頭頂部に水瓶などを乗せて移動するのを見たことがあると思いますが、彼女らは首の筋肉がムキムキでしょうか? いいえ、姿勢が安定していれば、背骨が支えるから、そこまでの筋力は必要ないのです。
昔の行商や籠かきなどの人もそうです。現代でも、引っ越しや土木作業の現場などで、小柄なおじいちゃんが、驚くほど重いものをひょいっと動かすのを見て感嘆することがあると思います。これがいわゆる、コツ(骨)を使うってやつです。

この、骨格を有効利用する、という単純な事。
しかし、それを本当に徹底的につきつめているかどうかは、実に大きな差になります。
つまるところ、当身であれ、投げ技であれ、土台になる骨格に歪みや崩れがあれば、曲がった銃身から弾を撃ったり、傾いたクレーン車で物を釣り上げようとしているのと同じだからです。

そして、逆に言えば、相手の骨格を崩す事で、相手を弱体化できます。
大体、少し組み合ってみると分かるのですが、人間には二通りのタイプがあります。
投げられまい、打たれまいとして、ガチガチに体を突っ張る人と、来る力を柔らかくいなそうとする人です。
前者は、その堅さを逆に利用して、骨格を固定する事で弱体化できます。
たとえば、スキー靴をはいた事のある人は、そのまま歩こうとして非常に不自由を感じた事があると思います。この時、誰かがふざけて押し飛ばしたら、転んでしまうでしょう。
足首一か所の関節が固定されただけで、ここまで不安定になるのです。
後者は、逆に関節を可動させる事で弱体化できます。
関節の結合部へ回転をかける事で、体を支えられない位置まで、重心をずらすのです。
この、固定化と変形の二法を使い分けたり、連係する事で、いろいろな効果を生み出せます。私の技術が、拳法と柔術の両面に跨がっているのは、拳法から、固定化と反発の理を、柔術から、変形と同化の理を取り入れる為でもあります。
そして、筋肉の力は、その筋肉に関連する特定の動作しか強化しませんが、骨の操作法、コツは、あらゆる動作に応用が効くという利点があるのです。

武術の世界は、いろいろなワードが埋もれていて、それをあちこち掘り返しては、みんな分かったような気になったり、すぐ次を知りたがったりしがちですが、広く浅く掘っても、大抵、小さな発見しかありません。
簡単そうなテーマにみえることでも、山芋を折らずに丹念に掘るように、最後まで進んでいくと、意外に大きな根っこにつながっている事もあります。打突でも、押し引きでも、受けでも型でも歩法でも、ベターな骨格と姿勢は何かを考えてみると、一段、違ったものが見えてくるかもしれません。

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